NEUMANN NDH 30を購入してしばらく使ったのでレビューしていきます。使い心地良し、デザイン良し、音は至極のモニターサウンド。刺さる人には刺さるヘッドホンです。
リスニング用途としてレビューします。
NDH 20とNDH 30との違い
NDH 20はNEUMANN初のヘッドホンで2019年4月に発売。およそ2年半の時を経て登場したのがNDH 30となります。密閉型であるNDH 20の開放型バージョンがNDH 30。どちらも38mmダイナミックドライバーという点ではどちらも同じですが、今回NDH 30用に新たに開発したドライバーを使用しているようです。
開放型である点と新ドライバーによって特性が若干異なります。
NDH 20 | NDH 30 | |
型式 | 密閉型、ダイナミック | 開放型、ダイナミック |
再生周波数 | 5Hz-30kHz | 12Hz-34kHz |
インピーダンス | 150Ω | 120Ω |
最大音圧レベル | 114dB SPL | 104dB SPL |
質量 | 388g | 352g |
実際にe☆イヤホン さんの店舗でNDH 20とNDH 30を聴き比べてみましたが、そのサウンドは全くの別物に感じました。
NDH 20は密閉型らしい、ややこもった音で不明瞭、かつ音場も狭く感じました。一方でNDH 30は高音域の伸びが非常に良くスカッと晴れ渡るようなサウンドで、音場も広く、一音一音の明瞭度が格段に良く感じました。とにかく定位のわかりやすさが別格で、型式とドライバーの僅かな違いでここまで変わるのかといった印象でした。
申し訳ないがNDH20は全然好きになれなかったんだわ
NDH 30外観、付属品をチェック
それではNDH 30の外観から見ていきます
NEUMANN NDH 30本体
まずは本体から見てきます。
全体的に高級感があり、しっかりとした作りで好感触。
ロック可能なケーブル
ケーブルを見ていきましょう。
付属のケーブルは3メートルもあるので装着したまま、物を取りにちょっと立ち上がってもかなり余裕がありました。
方出しのためリケーブルによるバランス化はできない
NDH 30は方出しとなっているため、流行りのバランス入力は基本できません。
付属のケーブルもバランスケーブルではないものの、内部はクロストークを抑えた構造になっているとのことで、音質面での心配はあまりないでしょう。
着けけ心地や使い勝手は良好
装着してみると非常に軽い付け心地です。重さは352g
側圧もそれほど強く感じません。
今手元にあるヘッドホンで側圧の強い順に並べると、
- beyerdynamic DT1990Pro
- HIFIMAN SUNDARA
- HIFIMAN ANANDA
- HIFIMAN Arya
- NEUMANN NDH 30
- SENNHEISER HD800S
といった感じです。
また、NDH 30はハウジングが前後に回転するので、フィット感も良好ですし、リスニングポイントも合わせやすいのが良いです。
一つだけ気になるのはケーブルが右出しなところ
一つだけ気になったのはケーブルが右出しなので時々左右間違えてつけてしまう点です。片出しのヘッドホンは左側からケーブルが出ていることが多いのですが、NDH 30は右側なので慣れるまで使いづらさはあるかもしれません。
慣れれば問題ないけどね!
音質をチェック
色々聴いていきます。
アンプはRNHPまたはTOPPING A90 Discrete、DACはTOPPING A90SEです。どれもいい製品です。
ざっと聴いた感じ、モニターヘッドホンらしくジャンル無視で何でも巧く鳴ります。
タイトなリズムに悶絶
特に良かったのは低音をしっかり効かせながらでタイトで小気味良くリズムを刻む音楽がいいです。FUNK、SOUL、R&B、HIP HOP、サンバとかですね。
例えば上記のような曲を再生してみると、ほどよく厚みのあるベースラインとタイトなドラムスに自然と体を揺らしています。ヴォーカルやコーラス、パーカッションなどに耳を向けるとしっかりとリバーブが聞き取れて奥行きも、横の広がりも感じられてとてもいい感じです。
定位が明確だから音を追いかけるのが楽しい
NDH 30は定位が明確なので音を追いかけるのが楽しくなります。
例えばミスチルのようなバンドサウンドを聞いてみると、ギターはリバーブだけ右に飛ばしてるなとか、ハイハットは左に寄ってて、ハイハットの裏拍でシャカシャカ鳴ってるやつは右で、とか。
細かな音の配置も手に取るようにわかるのがめちゃくちゃ楽しいのよ!
主役はセンターにありながらも…
そして、NDH 30はとにかくセンターに定位させたヴォーカルとかサックスとか主役が主役らしく一番目立つところに鎮座。
いわゆるヴォーカルが近いってやつ
上記はどちらも、もともとそういうミックスですが、NDH 30で聞くと格別。ヴォーカルもサックスもセンターで存在を主張しながら細かいニュアンスもしっかりと表現。とはいえ、他の楽器が脇役に徹するわけではなく、耳を向ければ演奏者の確かな息遣いが聞こえてくる。
NDH 30はそんな至極のヘッドホンなんだって!
価格が高いので当然と言えば当然ですが、ミドルクラスヘッドホンレビューで紹介したどのヘッドホンよりも格上の音質。質感が比較的近いヘッドホンとしては名機HD650だけど全体的な解像感や正確さで言えば圧倒的にNDH 30の勝ち。
HD800Sと聴き比べ
ceroの名盤ファーストから「Yellow Magus」を再生。NEUMANN NDH 30、冒頭のキーボードがスムースに左右に揺れる。ドラムの鳴り方がおかしい。ヘッドホンの鳴り方じゃない。ヴォーカルが近くスタジオのラージモニターで聞いているような錯覚を覚えます。
SENNHEISER HD800Sにしてみます。NDH 30と比べると高音域が繊細、かつ鋭い。低音もかなり下の方まで出ます。NDH 30の方がやや上下帯域が狭く感じますが、HD800Sが出過ぎなだけで、NDH 30でも何も不満は感じません。
そしてHD800Sはヴォーカルが、というか全体的に音が遠くから聞こえる印象です。やっぱり音場はHD800Sのほうが広大。NDH 30は横の広がりはあまり感じないものの、不思議と奥行きはNDH 30の方が感じます。
NDH 30が、一つ一つの音がどう配置されているか耳で追いかけて楽しむタイプなら、HD800Sは広大な音場に囲まれてその世界観にどっぷり浸って楽しむといった感じです。
この二つを比べるとNDH 30は圧倒的にモニター向けのサウンドでHD800Sはリスニング向けです。私は何方かと言えばモニター向けのサウンドが好きです。でもHD800Sも好きです。方向性が全く違うので、どちらも売らず2本持ちでしばらく楽しみたいと思います。
結局どっちも好きってんだから!
アンプを色々変えてみる
RNHPからA90 Discreteに変えたところ、全体的な解像度が増して、表現が緻密になった印象です。再びRNHPに変えてみると、高音域に丸みが出てヴォリュームをあげても心地いいです。この二つのアンプはどちらもいいアンプで、ヘッドホンによってはあまり違いがわからず、どっちで聞いても十分楽しめる音質です。が、NDH 30で聞くと結構違いがあることに気づきました。NDH 30はアンプの違いもハッキリと表現するほど、正確な描写力を持っていると言えるでしょう。
ポータブルアンプのiFi xDSD Gryphonでも聴いてみます。(iFi xDSD Gryphonについてはこちらでレビューしています)NDH 30はインピーダンスが120Ωで鳴らしやすい部類とは言えません。一般的なポップスでiFi xDSD Gryphonの音量は95くらい(MAX値は106)で十分なレベル。ダイナミックレンジの広いクラシックとかだと流石に余裕はないですが、静かな部屋で聞くなら問題ないでしょう。音質も満足のできるものです。持ち出して使うなら、これくらいパワーのあるアンプは欲しいところですね。
NDH 30はバンドサウンドが好みなら買っていい1本
NDH 30を実際に使って感じたメリットとしては下記です。
- 音の配置が手にとるようにわかる
- 横の広がりは普通だが奥行き感がすごい
- 質感はややドライではあるものの、全体の描写は緻密でハイセンス
- 低音域はタイトで必要十分な量感
- 高音域の繊細な表現も得意
- 装着感、フィット感は良好で長時間でも疲れなかった
上記です。
eイヤホンさんで30〜50万クラスのヘッドホンをいくつも試聴させていただきましたが、やや癖があり特定のジャンルではめちゃくちゃいい。でも、そのために数十万を出せるほど僕は裕福ではないので、10万以下でなんでも聴けるこういうヘッドホンは大歓迎です。
聞けば聞くほど好きになるヘッドホンですね。ファーストインプレッションでは定位が掴みやすく癖がないヘッドホン、くらいの感想しかなったんですが、今では毎朝目を覚ました時にこのヘッドホンで聞く時間が楽しみでワクワクして寝起きが良くなったくらいです笑